Dooby
その、ジョンという名前の陽気なニュージーランド人は、
ぼくらが店に入る前からカウンターで飲んでいて、
きっと楽しかったのだろう、
ぼくらもふくめて周りの客に酒をおごり始めた。
とにかく話好きな奴で、
英語が通じない相手でもお構いなしで話しかけていた。
ちなみにぼくと同い年で英語の講師をやっていて、
古いロックが好きだった。
冗談で、
「Fuck you」
を連発して周りを笑わせていた。
喋るペースも飲む酒のペースも早かった。
早朝の4時か5時ごろになって、
さすがのジョンも帰ろうとチェックをしたのだが、
どうやら予想していた金額をはるかに越えていたらしく、
「really?」
と一言つぶやいて顔面蒼白になっていた。
お金が足りなかったのでよしくんに残りはツケにしてもらった後は、
カウンター席でため息ばかりついていた。
あんなに楽しそうに喋っていた面影はどこにもなかった。
だんだんかわいそうになってきて、
一杯おごってもらった分を返すつもりで、
ぼくと西くんが500円ずつジョンに渡したら日本語で、
「・・・やさしい」
と言った。