2015-01-01から1年間の記事一覧
ほろ酔いマンションと呼ばれるビルがあって、 一階に、へべれけがじがじ という名前の飲み屋が入っている。 そこの店主が、ガジ君である。 ・・・・以上のような前情報を踏まえていないとどうなるか? という話である。 大阪からの友達を招いてホームパーテ…
2015年の牛窓ナチュラルキャンプ。 浜辺に建てたティピのなかに畳を敷いていたり、 森の奥にはハンモックを吊るして、 椅子が並べられていたり、 お客さんがくつろげるスペースがたくさん用意されていた。 「こんなにサービスしても、どうせクソみてーな…
次のバス停には人が待っていませんように と、 祈りながら歩く。 誰か待っている人がいると、 なにくわぬふりをして前を通り過ぎる。 運良く誰もいないバス停にたどり着いても、 遠くからやってくるバスの車内に人影が見えると、 恐ろしくなって、 こそこそ…
路肩に軽四が停まっていて、 開いた運転席のドアから、 おっさんが半身乗り出していたので、 どうしたのかと思ったら、 こぼれないようにラムネの栓を開けているところだった。
母と、 弟と、 田んぼの真ん中にある鳥居をくぐって裏山に登った。 弟はまだ小さく、 母には坂道が辛いのではないかと思い、 後ろにまわって母の背中を両手で押した。 照れくさかったから、 「早く登ろう!」 と、急かすふりをした。 急かしたことで母が無理を…
三十九号線を牛窓に向って走っていると、 紺浦の交差点手前のカーブした坂道で、 農協の倉庫の屋根ごしに、 一瞬だけ海が見える。 その道沿いには桜の木が植わっていて、 春には花の舞い散る下を中学生が自転車をこぐ。
yukuriの庭で、 きゅうりのモスコミュールを飲みながら煙草を吸っていると、 ダニエルさんが店から出てきた。 デッキチェアにふたりで座って、 カタコトの英語と日本語でいろんな話をした。 注意深く耳を傾け、 相手の言葉を聞く。 そんな当たり前のことが楽…
「雨だ。」 と、思った。 ハンドルにあごを乗せ、 身を乗り出して見上げる。 フロントガラスは乾いていて、赤信号の先には青空が広がっている。 辺りを見回してみて、 ようやく、 ぱちぱちぱちぱち・・・ というその音が、拍手の音だったことに気づく。 カーオ…
いつも店内入り口付近に立っている、 おそらく支店長であろうと思われる痩身の男性が、 「いらっしゃいませ」 「ありがとうございました」 と挨拶してくれるのだけど、 だんだん発音がこなれてきていて、 この間なんかは完全に、 「一斉」 「nation」 って聞こえたん…
「オオヤユウスケくんと作ったんだ」 そう言って原田郁子はピアノを弾いた。 やたらとタイトルの長いその曲は、 いまでもいちばん好きな曲だ。 ぼくは客席の後ろ、 ドアのそばに立って、 約束した女の子が来るのを待っていた。 あわよくばライブの帰りに、 彼…
「閉まってます。って看板出てたけど、どうしたの?」 「さっきスタッフと大ゲンカしちゃって、それで閉めてたんです」 「え?だいじょうぶなの?」 「もうだいじょうぶです。今おわびのドーナツ揚げたとこなんで!」 「ドーナツ・・・」 「いっこ食べます?」 「うん」
すっかり紅葉した落ち葉を拾ってフランソワが言う。 「どうして、葉っぱはこの色になるのか、分かる?」 ぼくは首を横に振る。 「葉っぱの色はもともとこんな色。夏の間だけ、光をいっぱい浴びて緑色になる。 夏が終わったらだんだん元の色に戻る。だからこれは…
脱衣所で、 仁王立ちで、 ドライヤーをふたつ、両手に持って髪を乾かしているおじさんがいた。 鷺温泉の露天風呂には、 「武蔵の湯」 という名の湯船がある。
前の車が少しだけ前進した。 車間距離が開いたけど、 相変わらず信号は赤のままだったから、 しばらくブレーキを踏んだままでいた。 その一瞬間、若い男性が目の前を横切った。 こちらに顔を向け、目を見て軽く会釈した。 たったそれだけのことをいまだに思…
出店ブースの位置決め、 電源の確認、 搬入の手順。 目前に迫ったイベントの最終ミーティングを終えたナオちゃんとぼくは、 階段の途中で何組かの若者とすれ違う。 彼らは一様に、同じデザインのタオルを肩にかけたり、 頭に被ったりしている。 なんだろうね…
maimaiから、 アメリカーノをテイクアウトして道路を渡り、 オレンジホール入り口のベンチに座る。 しばらくすると、 休憩中のルンバさんがやってきて隣に座る。 ふたりしてぼんやりと。 目の前の駐車場には櫓が組まれ、 音割れしたスピーカーから音頭が流れ…
おっさんが突然、 景気よく都々逸みたいなのをやりだして、 こういうとき、 「いよっ!」 「よぉぉう!」 とか、 合いの手を入れたほうがいいんだろうか、 なんてぼんやりと考えながら見上げた夜空からは、 湯船に落ちる前に融けてしまいそうな、 小さな雪片が。
路面店もすっかり閉まって、 街灯がぽつぽつ。 中橋渡って左か右か。 「よし、二手に分かれよう! おれはこっちだ!」 「じゃあ、わたしはこっちに・・・ってコラ!」 冗談ばかり。 手も繋がずに白壁の町。 暗くなるまで行ったり来たり。